デジタルトランスフォーメーション(DX)は、企業の競争力を左右する重要な経営課題となっています。
しかし、経済産業省の調査によれば、多くの企業がDX推進の必要性を認識しているものの、実際に成果を上げている企業は一部にとどまります。
DXへの取り組みを検討する際には、期待できるメリットだけでなく、直面する可能性のあるデメリットや課題についても正確に把握しておく必要があります。
本記事では、DX化によって企業が得られる7つのメリットと4つのデメリット、さらにメリットを最大化するためのポイントについて解説します。 自社のDX推進戦略を検討する際の参考にしてください。
DX化で企業が得られる7つのメリット
DX化を推進することで、企業は業務効率の向上からビジネスモデルの変革まで、幅広い恩恵を受けられます。単なるIT導入とは異なり、DXは組織全体のあり方を変革し、持続的な競争優位性を構築するための取り組みです。ここからは、DX化によって企業が得られる代表的な7つのメリットを紹介します。
- 業務効率化と生産性の向上
- コスト削減の実現
- 意思決定スピードの向上
- 顧客満足度の向上
- 働き方改革の推進
- BCP対策の強化
- 新たなビジネスモデルの創出
業務効率化と生産性の向上
DX化の最も直接的なメリットは、業務プロセスの効率化と生産性向上です。手作業で行っていたデータ入力や集計作業を自動化することで、従業員はより付加価値の高い業務に集中できるようになります。
たとえば、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入することで、定型業務の処理時間を大幅に短縮できます。 人為的なミスも削減され、業務品質の安定化にもつながるのが特徴です。
また、社内の情報共有基盤を整備することで、部門間の連携がスムーズになり、組織全体の生産性が向上します。業務の見える化によって、ボトルネックの特定や改善施策の立案も容易になるため、継続的な効率改善が可能となります。
コスト削減の実現
DX化によって業務効率が向上すれば、人件費や運用コストの削減が期待できます。紙ベースの業務をデジタル化することで、印刷費や保管スペースのコストも抑えられるのがメリットです。
クラウドサービスの活用は、自社でサーバーを保有・運用するコストを大幅に削減する有効な手段となります。 初期投資を抑えながら、必要に応じてリソースを柔軟に拡張できる点も魅力的な要素といえます。
さらに、データ分析による需要予測の精度向上は、在庫の最適化や廃棄ロスの削減につながります。長期的な視点で見れば、DXへの投資は確実にコストメリットをもたらす取り組みです。
意思決定スピードの向上
デジタル化によってリアルタイムでデータを収集・分析できる環境が整えば、経営判断のスピードが飛躍的に向上します。従来は月次や週次でしか把握できなかった経営指標を、日次あるいはリアルタイムで確認できるようになるためです。
BIツールやダッシュボードを活用することで、複雑なデータを視覚的に把握し、迅速な意思決定が可能になります。 市場環境の変化にタイムリーに対応できる体制を構築することは、競争優位性の確保に直結する重要な要素です。
また、データに基づく意思決定は、経験や勘に頼った判断よりも客観性と再現性が高く、組織全体の判断力強化にも寄与します。
顧客満足度の向上
DX化によって顧客データを一元管理・分析できるようになれば、より的確なサービス提供が可能になります。顧客の購買履歴や行動パターンを把握することで、ニーズに合わせたパーソナライズされた提案を実現できるのです。
CRMシステムの導入により、顧客とのあらゆる接点を記録・共有し、一貫性のある対応を提供できるようになります。 担当者が変わっても顧客対応の質が落ちない体制を構築することは、顧客ロイヤルティの向上に欠かせません。
加えて、チャットボットやFAQシステムを活用すれば、24時間対応の顧客サポートを低コストで実現可能です。顧客接点の拡充は、競合他社との差別化要因にもなります。
働き方改革の推進
DX化は働き方改革を推進するうえで不可欠な基盤となります。クラウドサービスやコミュニケーションツールを活用することで、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を実現できるためです。
テレワーク環境の整備により、従業員のワークライフバランスが向上し、優秀な人材の確保・定着にもつながります。 育児や介護と両立しながら働ける環境は、多様な人材を活かす経営の実現に寄与するものです。
さらに、業務の標準化・デジタル化によって属人的な業務を減らし、誰でも一定の品質で業務を遂行できる体制を構築できます。これは長時間労働の是正にも効果を発揮します。
BCP対策の強化
事業継続計画(BCP)の観点からも、DX化は重要な意味を持ちます。データをクラウドに保存し、業務システムをオンライン化することで、自然災害やパンデミックなどの緊急事態においても事業を継続できる体制を構築可能です。
オフィスに出社できない状況でも、リモートから業務を継続できる環境があれば、事業中断リスクを最小限に抑えられます。 実際に、コロナ禍においてDX化が進んでいた企業は、事業への影響を比較的軽微に抑えることができました。
また、データのバックアップや冗長化により、システム障害時のデータ損失リスクも軽減できます。BCPへの取り組みは、取引先や投資家からの信頼獲得にも直結する重要な経営課題です。
新たなビジネスモデルの創出
DXの本質的な価値は、既存業務の効率化にとどまらず、新たなビジネスモデルの創出にあります。デジタル技術を活用することで、従来は実現が難しかったサービスや収益構造を生み出すことが可能です。
たとえば、製造業がIoTを活用して製品の稼働データを収集し、予防保全サービスを提供するサブスクリプションモデルへ転換する事例があります。 製品販売からサービス提供へのビジネスモデル転換は、安定的な収益基盤の構築に貢献します。
さらに、データを活用した新規事業の創出や、異業種とのコラボレーションによる価値創造も期待できます。DXは単なるコスト削減策ではなく、成長戦略の核心となる取り組みです。
DX化を進める際の4つのデメリット・課題
DX化には多くのメリットがある一方で、推進にあたっては乗り越えるべき課題も存在します。事前にデメリットや課題を把握しておくことで、適切な対策を講じながらDXを進められるはずです。ここでは、DX推進において多くの企業が直面する4つの主要な課題を解説します。
- 初期投資とランニングコストの負担
- DX人材の確保と育成の難しさ
- レガシーシステムからの脱却の難しさ
- 成果が出るまでに時間がかかる
初期投資とランニングコストの負担
DX化を推進するためには、システム導入や環境整備のための初期投資が必要となります。中小企業にとって、この初期コストの負担は大きなハードルとなることが少なくありません。
クラウドサービスを利用する場合でも、月額利用料やライセンス費用が継続的に発生します。 投資対効果を見極めながら、段階的に導入を進める計画性が求められるのです。
また、システム導入後の保守・運用費用や、従業員への教育研修費用も考慮する必要があります。長期的な視点でコストとリターンを試算し、経営層の理解を得ることが成功の鍵となります。
DX人材の確保と育成の難しさ
DXを推進するためには、デジタル技術に精通した人材が不可欠です。しかし、日本国内ではIT人材の不足が深刻化しており、優秀な人材の確保は困難を極めます。
DX人材に求められるスキルは、単なる技術力だけではありません。 業務プロセスへの理解やプロジェクトマネジメント能力、変革を推進するリーダーシップなど、多面的な能力が必要とされます。
社内での人材育成にも時間とコストがかかるため、外部リソースの活用も含めた戦略的なアプローチが求められます。既存社員のリスキリングと外部採用を組み合わせた人材戦略の構築が重要です。
レガシーシステムからの脱却の難しさ
多くの企業が長年使い続けてきたレガシーシステムは、DX推進における大きな障壁となります。古いシステムは新しい技術との連携が困難であり、データ活用の妨げとなるケースが多いのが実情です。
レガシーシステムの刷新には多大なコストとリスクが伴うため、多くの企業が二の足を踏んでいます。 しかし、放置すればするほど技術的負債は蓄積し、将来的な刷新コストはさらに膨らむことになるのです。
段階的な移行計画を策定し、優先度の高い領域から着実にモダナイゼーションを進めていくアプローチが現実的な解決策となります。
成果が出るまでに時間がかかる
DXは短期間で成果が出る取り組みではありません。システム導入から運用定着、そして効果創出までには相応の時間を要するため、経営層や現場の理解と忍耐が求められます。
途中経過が見えにくいと、投資に対する懐疑的な見方が社内に広がりやすくなります。 マイルストーンを設定し、段階的な成果を可視化することで、組織全体のモチベーションを維持することが大切です。
また、DXは一度達成すれば終わりというものではなく、継続的な改善と進化が必要な取り組みです。長期的な視点で成果を捉え、粘り強く推進していく姿勢が成功の条件となります。
DX化のメリットを最大化するコツ
DX化のデメリットや課題を克服し、メリットを最大限に引き出すためには、戦略的なアプローチが欠かせません。特に重要なのは、自社だけで全てを抱え込まず、適切な外部パートナーとの連携を検討することです。ここでは、DX推進を成功に導くための2つの重要なポイントを解説します。
- 専門パートナーへの外注を検討する
- 自社リソースと外部リソースを適切に組み合わせる
専門パートナーへの外注を検討する
DX人材の不足は多くの企業が抱える共通の課題ですが、外部の専門パートナーを活用することで効果的に解決できます。システム開発会社やITコンサルティング会社には、DX推進に必要な専門知識とノウハウが蓄積されているためです。
外部パートナーは最新の技術トレンドにも精通しており、自社だけでは得られない知見を活用できます。 他社での成功事例や失敗事例を踏まえた実践的なアドバイスは、DX推進を加速させる貴重な資産となるのです。
また、プロジェクト単位で必要なリソースを確保できるため、固定的な人件費の増加を抑えながら、専門性の高い業務を遂行することが可能です。
自社リソースと外部リソースを適切に組み合わせる
外部リソースの活用は有効な手段ですが、全てを外注すればよいわけではありません。自社のコアコンピタンスに関わる領域は内製化を維持しつつ、専門性が高く自社にノウハウがない領域は外部に委託するというバランスが重要です。
まずは外部パートナーの支援を受けながらDXを推進し、徐々に社内にナレッジを移転していく段階的なアプローチも効果的です。 外部依存度を下げながら自社のDX推進力を高めていくことで、持続可能な体制を構築できます。
最終的には、自社の強みを活かしたDX戦略を自律的に推進できる組織づくりを目指すことが理想的なゴールといえます。
外注先選定のポイント
DX推進を外部パートナーに依頼する際には、適切な外注先の選定が成否を分けます。単に技術力が高いだけでなく、自社の業界特性や課題を理解し、伴走型で支援してくれるパートナーを選ぶことが重要です。
選定にあたっては、過去の実績や得意分野、プロジェクト管理体制、コミュニケーションの質などを総合的に評価する必要があります。 価格だけで判断するのではなく、長期的なパートナーシップを築ける相手かどうかを見極めることが大切です。
また、オフショア開発やニアショア開発といった選択肢も視野に入れることで、コストと品質のバランスを最適化できます。複数の候補と面談を重ね、相性を確認したうえで最終決定を行うプロセスを踏むことを推奨します。
まとめ
DX化は、業務効率化やコスト削減、顧客満足度向上など、企業に多くのメリットをもたらす取り組みです。一方で、初期投資の負担やDX人材の不足、レガシーシステムの刷新といった課題も存在し、これらを乗り越える戦略が求められます。
DXのメリットを最大化するためには、自社だけで抱え込まず、専門パートナーの力を借りながら推進していくアプローチが効果的です。外部リソースと自社リソースを適切に組み合わせ、段階的にDX推進力を高めていくことが成功の鍵となります。
自社の現状と目指すべきゴールを明確にし、最適なパートナーとともにDXへの取り組みを始めましょう!

