本記事では、AIコーディングで著作権が認められるケース、商用利用・納品時に確認すべき点、著作権侵害が問題になるケース、トラブルを防ぐポイントを解説します。自社でAIコーディングを取り入れる際の参考にしてください。
AIによるコーディングで著作権が認められるケース
AIが生成したコードが著作権で保護されるかどうかは、次の2つの観点から判断されます。
- 人間の創作的な関与がある場合
- コードに創作的な表現がある場合
人間の創作的な関与がある場合
AIによるコーディングで著作権が認められるのは、人間の創作的な関与がある場合です。文化庁が2024年に公表した「AIと著作権に関する考え方について」では、人が思想や感情を創作的に表現するための道具としてAIを使ったと認められる場合に、著作物として扱われるとしています。つまり、簡単な指示を与えてボタンを押しただけのような使い方では、著作物としては認められません。
判断のポイントは、指示の具体性や、生成後に人が加えた修正の内容です。生成された候補から単純に選ぶだけの行為は、創作的な関与として扱われませんが、コードに創作的な表現といえる加筆や修正を加えた部分は、通常その部分について著作物性が認められます。なお、著作権法上、著作者になれるのは人(自然人・法人)に限られるため、AI自体が著作者になることはありません。(出典:「AIと著作権に関する考え方について」【概要】|文化庁)
コードに創作的な表現がある場合
コードに創作的な表現がある場合は、プログラムの著作物として保護される可能性があります。著作権法は「プログラムの著作物」を著作物の一例として挙げており、電子計算機を機能させて結果を得るための指令の組み合わせであるプログラムも、保護の対象に含まれます。
ただし著作権法では、プログラムを作成するために用いるプログラム言語、規約(インターフェースやプロトコルなど)、解法(アルゴリズム)は、保護の対象外です。そのため、AIが生成したコードであっても、アルゴリズムそのものや一般的な書き方には著作権が及ばず、具体的な実装における表現上の工夫の部分だけが保護の対象になります。
ごく短い、誰が書いても同じような書き方になる定型的なコードは、創作性が認められにくい点にも注意が必要です。
AIが生成したコードは商用利用・納品できる?
AIが生成したコードを商用利用・納品する際は、次の3点を確認します。
- AIツールの利用規約を確認する
- 第三者の権利やライセンスを確認する
- 納品先との契約条件を確認する
AIツールの利用規約を確認する
AIが生成したコードを商用利用、納品できるかどうか確認する場合は、利用規約をチェックしましょう。多くのツールでは生成された出力の利用権は、ユーザーに帰属するとされているからです。しかし、プランによっては条件が異なったり、商用利用そのものが制限されたりします。
無料プランと有料プランで商用利用の可否、権利の扱いが変わるケースもあるため、契約しているプランの規約を個別に確認しましょう。規約は改定されることもあるため、導入時だけでなく定期的な見直しも重要です。
第三者の権利やライセンスを確認する
AIが生成するコードを商用利用、納品する場合は、第三者の権利やライセンスを確認しましょう。AIは学習データに含まれる既存のコードを元に出力しており、精製したコードが第三者の著作物と類似してしまう可能性があります。
とくにオープンソースソフトウェア(OSS)のコードが学習データに含まれている場合、既存コードとの類似性や依拠性が認められると、著作権侵害やライセンス違反につながるおそれがあります。
納品先との契約条件を確認する
AIコーディングの著作権や商用利用の可否に関係なく、納品先との契約条件も重要です。契約書の中には、成果物に生成AIを使用して良いかどうかについて、事前の承諾を求める条項が含まれることがあります。
また、納品物の著作権を発注者へ譲渡する契約になっている場合、AI生成部分の権利がどう扱われるかが曖昧になりやすい点にも注意しましょう。契約前に、AI利用の可否と、生成コードを含む成果物の権利の扱いについて、発注先とすり合わせておくことがトラブル防止につながります。
AIによるコーディングで著作権侵害が問題になるケース
AIによるコーディングでは、次の2つのケースで著作権侵害が問題になります。
- 既存コードとの類似性・依拠性が認められる
- OSSのライセンス条件に違反する
既存コードとの類似性・依拠性が認められる
AIコーディングで著作権侵害が問題になるケースの代表例が、既存コードとの類似性や依拠性です。文化庁の考え方によれば、生成されたコードに既存の著作物との類似性(創作的表現が共通していること)と依拠性(既存の著作物をもとに作られたこと)の両方が認められる場合に、著作権侵害に該当します。
既存の著作物がAIの学習データに含まれていたことが立証できる場合は、利用者がその著作物を知らなかったとしても、依拠性が推定されるという考え方です。
実際に、GitHub Copilotについては、学習に使われた公開コードとの類似が争点となり、2022年11月に米国で訴訟が提起されました。2026年時点でも係争が続いている状況で、国内での対応を考えるうえでも参考になる事例です。
OSSのライセンス条件に違反する
OSSのライセンス条件への違反は、著作権侵害とあわせて注意すべきリスクです。AIの学習データには、OSSとして公開されているソースコードも含まれているため、生成されたコードがOSSの一部を強く反映してしまうことがあります。
GPLのようなライセンスには、そのコードを組み込んだソフトウェア全体にも同じ条件を適用することを求めるものがあり、意図せず自社製品のソースコード公開義務を負ってしまうおそれがあります。MITやApacheのような比較的制限の緩いライセンスであっても、著作権表示の保持など、最低限守るべき条件が定められている点は変わりません。
公開コードと一致する提案を検出してブロックする機能を備えたAIツールもあるため、積極的に活用しましょう。OSSライセンスとAIコーディング全般の関係は、コード生成AIとは?主要ツールの比較と失敗しない選び方を解説でも取り上げています。
AIコーディングの著作権トラブルを防ぐポイント
AIコーディングの著作権トラブルを防ぐには、次の4点を実践しましょう。
- 他人のコードを入力する前に権利を確認する
- 生成コードの一致箇所や出典を確認する
- 人間による指示・修正の履歴を残す
- AI利用の申告と問題発生時の対応を決める
他人のコードを入力する前に権利を確認する
AIコーディングの著作権トラブルを防ぐには、他人のコードを利用する前の権利確認を徹底しましょう。取引先や前任者から引き継いだコードを解析させたり、参考として読み込ませたりする場合、そのコードの著作権や秘密保持契約の範囲を確認せずに扱うと、思わぬトラブルにつながります。
社外のコードや非公開のソースコードをAIに入力する際は、権利者の許諾範囲や契約上の制約を事前に確認しておくことが基本です。とくに、外部のAIサービスにデータを送信する形式のツールでは、入力した情報の取り扱われ方もあわせて確認しましょう。
生成コードの一致箇所や出典を確認する
生成コードの一致箇所の確認は、著作権侵害を未然に防ぐための実務的な対策です。生成されたコードをそのまま採用する前に、検索や重複検出の仕組みを使って、既存の公開コードと一致する箇所がないかを確かめます。
一致箇所が見つかった場合は、そのコードの出典やライセンスを調べ、条件を満たせない場合は書き換えるか、別の実装に差し替える判断が必要です。確認の記録を残しておくと、後から権利関係を説明する際にも役立ちます。
人間による指示・修正の履歴を残す
トラブルを避けるために、AIによるコーディングでも人間による指示や修正の履歴をしっかり残しましょう。人間による指示・修正の履歴は、生成コードの著作物性を検討する際の手がかりになります。文化庁の考え方でも、指示の具体性や、生成後に人が加えた修正の有無は、創作的寄与を判断するうえでの材料です。
プロンプトの内容や修正のやり取りを記録として残しておくと、コードの権利関係が問題になった際に、人がどこまで関与したかを説明しやすくなります。バージョン管理システムのコミット履歴やレビュー記録を活用するのも一つの方法です。
AI利用の申告と問題発生時の対応を決める
AI利用の申告ルールは、社内外での責任の所在を明確にするために欠かせません。プロジェクトや納品物にAIコーディングを使ったかどうかを申告する仕組みを整え、必要に応じて発注先にも共有します。
あわせて、著作権侵害の疑いが生じた際の対応フロー(利用停止、代替実装、法務への相談ルートなど)を事前に決めておくと、問題発生時に落ち着いて対応できます。Microsoftのように、自社製品の利用者が著作権で訴えられた際の防御や費用負担を約束するAIベンダーも存在するため、契約時には補償制度の有無も確認しておきましょう。
まとめ
AIによるコーディングの著作権は、生成物が著作物として保護されるかという論点と、既存の著作物を侵害していないかという論点の、2つに分けて考える必要があります。人間の創作的な関与があるかどうか、コードに創作的な表現があるかどうかが、権利の有無を左右するポイントです。
商用利用や納品にあたっては、AIツールの利用規約、第三者の権利やOSSライセンス、納品先との契約条件をひとつずつ確認する必要があります。既存コードとの類似性・依拠性が認められれば、著作権侵害の問題になる点にも注意が必要です。
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